空の表紙 −天上のエクレシア−







「ガラばーさん
正装した兵隊が走ってくぜ
えらく急いでる
何かあったのかな」



夕暮れ
月が昇りだした

屋上に作られた空中庭園には
様々なハーブが植えられている



『門限にでも遅れそうなんだろうよ
これ!ぼーっとしてないで
言ったもん集めな!
お前の薬作るんだからさ』


はいはぃ。と
ノアールは身を乗り出していた壁から
ヒョイと降りると籠に草を放る



「なあ…
この頭痛って
いつまで続くんだよ
…あの日から…ずっとだ…」



しゃがみ込み
膝を抱えるノアールの顔は
年相応の少年の顔に戻っていた




『浴びちまったからねえ…

ありゃあ
この世界には本来無い光だ。
私が使う魔法の光や炎だって
普段は目には見えないけど
この世界にキチンとある自然のもんだ』





「あれって元素を変化させる光だもんね」

その声と共に
屋上の薄い光のドームを通り抜け
羽音が上空から降り立つ



黒いローブを軽くはたき
『おっす』とノアールと拳を合わせた



腰を伸ばし立ち上がったガラは
嗄れた声で
顔全体を隠した黒いケープの奥から
目だけで微笑む


『お帰り。オデッセイ
食事を用意してある
奴も来てるよ』


オデッセイは頷くと
鼻歌を歌いながら扉に向かう




その姿が消えた後
ガラは『やばいねえ…』と
空を仰ぎ、呟いた。


「ん?」
ノアールは何事かとそれに倣う





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