空の表紙 −天上のエクレシア−

思いきり振返ると

量産型の細身な青銅の鎧に、
黒髪、瞳も黒


年は
ルビナより少し上だろうか

言葉の語尾と瞳に幼さが残り
実年齢より下に思える


「アクアス!?」


手綱をひくルビナの驚きと共に
ロバもいななく


それをいなしながら
少年は照れ臭そうに笑うと

「あ〜…」と一呼吸置いてから


「俺、今年の春
兵士学校を卒業して
故郷のこの町への配属願いが叶ったんだ


…幼馴染みの皆に
早く会いたかったけど
休みがなかなか無くてさ
初夏になっちゃった」



「ジーク兄は戻ってるの?!
アニキは士官学校の
先生になってるんだよね?!」



―その瞬間

いっぺんにアクアスの表情が
驚きの後に、曇る


「あ…」ともう一度吐き出すと
覚悟したかの様に呟いた




「…ジーク…行方不明なんだ」


「へ?!」


「…今年
俺の配属が決まった後位に、

知り合いに会いに、旅行に行くって…

その時その地方で
大規模な雪崩があって
村ひとつ埋まったらしい…。」



「でもジークだよ?!
そんな事あるわけないよ!」


ジークはアクアスの
五つ上の兄

先の大戦での英雄の一人だ


2mを越すその巨体で
大斧を自在に操るその姿は
鬼神と評された



「…でもアイツ
結構オッチョコチョイなトコ
あるからな…
子供ん時怪我多かったし…。」


「あるわけない!!!
きっと旅が楽しくて
今もどこかで昼寝でもしてるに
決まってる!!」



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