空の表紙 −天上のエクレシア−
「噴水のなか なにかいるの?」
少女はそう質問しながら覗き込む
「あやや!
蹴っ飛ばしたらサンダル
入っちゃってさ!えへへへ…」
ザバ。
「のあ?!」
少女はおもむろに腕を突っ込むと
数回掻き回してサンダルを掴みとった
「はい。」
「うひゃー…。ありがとー…。」
ぼとぼと音がした
最初はサンダルからの
水滴のせいだと思った
でも体は小刻みに震えて来るし
口にも塩辛い味が流れ込んで来る
『自分は泣いているんだ。』と
自覚してしまったら
もう止まらなくなった
側に居る少女の
不思議に落ち着く雰囲気も
要因の一つかも知れない
「 そんな事があったのか…」
「うん…
でももう落ち着いたしだいじょぶだよ!
ごめんね。変な話聞かせて…」
「ううん。いいよ。」
ルビナは、ちーん!と盛大に鼻をかむ
それが金貨を包んでいた
ハンカチだと気付いて大慌てする
「…でも…これどうしよう…」
ざり。とポケットから掴み出し見つめる
すると少女が噴水を指差しこう言った
「いらないなら、あそこへ、なげれば?」
「へ?」
「コインなげろって
そこの板に、書いてある」
「あ…うち字読めないから…」
少女は噴水の前にある石盤を
指で追いながら読み出す
「"ねがいの いずみ。
うしろむきでコインを投げて
見事入れば、
あなたのねがいは、かなうでしょう。'」
「…ホントかな…」
「でも そう かいてあるよ。」
ルビナは一瞬考えたがニサリ。と
笑って構える。
…大きく振りかぶって
「やっっきにく食わせろおおお!!」
…ボチャン。
「いやったあ!入ったあ!」
「でも今 うしろむいて なげてなかったよ。」
「がーん!!」
『…お前… 何やってんの?』
「ひ?!!」
そこには
あっけに取られた顔で
汗をかき
正装したままのアクアスが立っていた