空の表紙 −天上のエクレシア−


「アクアス!!
何でこんなとこいんの?!」

「お前こそ何で…」

「アクアス?誰かおぶってるの?」


アクアスの背中には
眠り込んだ子供
スゥスゥ寝息を立てる顔には
涙の痕が乾いて残っていた

「うわ ユピ。」

「え。サリュさんの知り合いの子?」

「うん」


「俺が街で歩いてたら
この子、迷子になったらしくて
しくしくしながら歩いてたんだ
随分歩いて来たらしくて、
足が痛いって…うわ!!」


アクアスの視線の先には
サリュの裸足があった

ルビナも
その足の惨状に気が付いて悲鳴をあげる
が慌てて走り出す

「水!井戸とかないのここ!」

「待って」

アクアスはユピをルビナに預けると
少し辺りを見回して
『あった』と呟きしゃがみ込む


何やらそこだけ色の違う地面を叩くと
ガコッと音がした


四角い石版の蓋を開けて
暫くいじっていたが




シャアアア…


「うおおお?!」


噴水が上がった。


暫く見ていると
澱んだ水面が透明になり
流れが生まれる


「あの〜…サリュ…さん?
縁に座って水で足冷やすといいよ」


「うん。」

「…痛くなかったの?」

「いたかったよ。」

「あ〜…。当たり前だよな。
…何聞いてんだ 俺…。」
ぽりぽり、と頭をかく。


噴水の底を見ると
だいぶ以前に投げられた
銅コイン達が沢山沈んでいる


「ルビナこれやってたのか〜」

「ん?ああ!うん!」

ルビナはポケットからコインを出すと
二人の手にも持たせる

「え〜…。こんなの信じてんの?ルビナ」

「あったぼーよ!!そーれ!!
やっきにく食わせろおおお!!」


…カチーン。

吹き出すアクアス

「外れてやんの」

「うるさああい!もーいっちょ!
やっきにく食わせろおおお!!」

「それしかないのかよ!」

「おおお!!見た見た?!入ったーー!」

「聞けよ!人の話を!!!」

サリュが声をあげて笑う。


その笑顔が可愛らしくて
アクアスは見とれてしまった

慌てて自分も噴水を背にして立ち上がる


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