空の表紙 −天上のエクレシア−
†記憶
『雪山の療養地に
記憶を無くした男がいる』
と言う噂をジーク聞いた
厚い外套の隙間からも
刺す様な空気が入ってくる
ここは国から1000ロッソ離れた雪国
現地で雇った道案内のシェルパを返し
重い荷物を自ら背負い
独り太陽と雪が白く光る空の下を
ゆっくり歩きだした
一応は軍事
命令だ
辺境地域の視察を指示され
それに乗る形の
久しぶりの遠出
しかし『視察』
それが軍の
表向きな名目なのは解っている
大方、地域拡大の火の見やぐらを
ここらにおっ立てたいんだろう
だがそんな事はどうでもいい
俺はあの日
光の渦と共に消えた
奴
ガーネットを探しに来たのだ