空の表紙 −天上のエクレシア−
巻毛の赤毛
くるくるとした短い髪が
ルビナの瞳と一緒に揺れる
− 睨むルビナの空気が
逆に気持ち良かった
アクアスだって
そんな風に思いたくはない
けれど状況、タイミングから考えて
普通に考え
行き着く結果はそれだ。
けれどこうやって
言えば言う程ルビナは
否定の空気をぶつけて来る。
「ちょっと!
後ろつかえてんのよ!
早くしてくんない?!」
ルビナの馬車の後ろから
貫禄充分な女将が
酒樽を叩きながら声を挙げる
「あわわわ…!」
アクアスは大慌てで
手元の書類に書き込み
「行ってよし!」と号令を掛けた
走り出す馬車の中から
ルビナは大声で叫ぶ
「うちまだあそこで
働いてるからー!」
アクアスはそれには振り向かず
軽く手を振っただけだった
外門を出て
暫くルビナは
思いを過去に馳せて居た
― 子供の頃、
3人で良く遊んだ
正確には4人。
ルード兄弟と犬、そして自分
ジークはアクアスと正反対で
かなりハッキリ物を言う
しかも「ああ。」とか
「だから?」の
単語口調が多く、
最初は誤解される事も多かったが
からかう事はあっても
誰かを仲間外れにしたり
苛めたりは絶対に無かったから
慕う子供達は多かった
ルビナ自身も、その一人
初夏の風が、ルビナの髪と
幌の中の葉を巻き上げると
ハッと我に返る
「早くしないとお花…!」
速度を上げて走る馬車の影が
地面を色濃く染める
石畳の町並みから覗く青い空は、
紙で貼った様に晴れていた。