空の表紙 −天上のエクレシア−
お届け物の秘密
「…もう一度言ってみろ!」
その怒りのせいでの
剣の鍔鳴り
柄を強く握る腕には筋が立ち、
相手を睨み付けた瞳は
屈辱に赤く血走っていた
「だってそうだろぉアクアス。
ジーク教官は
確かに前大戦では英雄だったらしいさ。
でも俺はそれを見た訳でもない。
士官学校でも役職にゃ付いてたが
剣を振るってる所も見たこたねぇし、
皆言ってたぜ!
「何か秘密でも知って、
それをネタに
ちゃっかり良いイスに
座り込んだんじゃねえか」ってなあ!
居なくなったのも、
その証拠湮滅の為に
どっかでやられたんじゃね?ってよ!」
「皆って誰だ。」
「み、皆って言ったら皆さ!
知ってどうすんだよ」
「……お前を切ったら
全員切りに行く。」
アクアスと同じ鎧を付けた、
おそらく同期の青年は、
それ程まだ怯えては居なかった
アクアスの腕は
本人が語る程強くはなかったし
仮にもここは兵舎とは言え、
城内で仲間を切ったら処刑と言うのは
決定事項だったからだ。
「言え。」
「しつっけえなあ!
それならこっちだって…!」
今しも剣を抜こうとした瞬間、
涼しい声と低い声が二つ同時に
高い天井へ響いた
「そこまでです!」
「いいかげんにしろ!!」
「うああっ?!」
二人の間に閃光が走り、
弾かれる様に廊下の端と端へ
吹き飛ばされる
アクアスに侮蔑を投げた青年は
小さく叫ぶとあたふたと
足を押さえながら、その場を逃げ出した
アクアスは逃げなかった
正確には背中を強く打って、
息が出来ずに動けなかったのだが…。