空の表紙 −天上のエクレシア−





馬乗りになり両腕を持ち上げ
手首を地面に押さえ込む

首を横に向け、闇鋼鐵のマスクの
留めていた後頭部のベルトを
片手で器用に、あっと言う間に
外してしまった

「お、おい…」

制止しようとするアクアス

ガシャリと外れたマスクの下から長い黒髪が現れる

ノアールは短い口笛を吹いて、
闇兵が口許を覆っていた布を
引き下ろす

「だってよ。こういう女って
どんな顔なのか見てみたいじゃ…」



ノアールの動きが止まった。


背後に立つアクアスには
ノアールの表情は見えない

「ど…どうした?」

はっと我に返ったノアールが
後ろを向こうとする

そこへ女の回し蹴りが入った


「!!」

緩んだ隙間から急いで体を抜くと、
女は走り出し、夜へと消えた


しかし
ノアールはもういないその姿を
まだ見ているかの様に
地面を見つめ、呟いた


「…だった…。」

「…え?」

「ロルカだった…」



自身の声に呼ばれた様に
ふらりとノアールは立ち上がり
彼女が走り去った方向へと
駆出して行った


アクアスは呆然とそれを見送ったが、
眉をきつく絞って剣の血払いをし
公園へと走り出した





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