空の表紙 −天上のエクレシア−
抱き起こしてくれたのは
銀の小手で、
それはフリート隊長と解った
銀色の髪を肩に流しながら
優雅な動きで、アクアスを覗き込む
「大丈夫ですか?」
そして白い裾と、杖の影
(やばいな…)と、
我に返って思ったものの、
頭の上から低い怒声が降って来て
もう後の祭りと悟った
「原因はなんだ!」
『白兎』
それがこの巨大な体に似合わぬ
僧兵の通称の名前
先の大戦での英雄の一人で
唯一城仕えに残った人物だ
普段は温和で愉快豪快だが、
一度怒ると手が付けられない
目を血走らせた顔と
その白い僧衣で
そんな俗称になったらしい
東洋の武術の段持ちで、
それを気法術と併せて使う
さっきのあれもそうした物だろう
アクアスは白兎の太い腕に
瞬く間に首根っこを掴まれ
長い廊下を引きずられて行く