空の表紙 −天上のエクレシア−
「…なんだか今日は騒々しい事…」
カーテンが閉められた
『本日は終了しました。
またのお越しを。銀細工・マナ』
綺麗に銀細工の装飾品が
ディスプレイされている店内
『青い宝石に埋められた鎧に身を包み
顎に手を充てポーズを取る兄王
少し後ろに佇む金色の鎧兜を纏った弟王』
の肖像画
それを
踊り子風の服を着た少女が
爪先立ちしながら見つめている
「セフィアさん。お待たせですわ〜。」
「お客帰ったの?」
マナは
黒い色硝子の入った
目を守る為のゴーグルを持ち上げ
微笑んだ
店奥のカーテンと分厚い扉
そこには表の店内からは
想像が付かない斧・鎌・槍などが
所狭しと陳列されていた
マナの作業机には小さな古い短銃
部品がばらされていて
修理途中の様だ
それを見付けてセフィアは首を竦める
「うわ。鉄砲だ」
「うふふ。玩具なんですのよ。これ。」
「そうなんだー良く出来てる」
そう言いながらセフィアは
周囲を一瞥すると
徐に紙に何か書き出しマナに
差し出した
「…取りあえずこれだけ用意して貰える?」
「うふ。物騒な物ばっかり。
建国祭にいらしたのではないのです?」
「そうだよー。
でも何か必要になる予感が
するんだよね。
さっきも塔から一人逃がして来たし」
「あら?」
表で何人もの気配
かすかな、走る音
「セフィアさん。奥へ。」
手で促し自分はゴーグルを外し表へ向かう
「…つけられた覚えは?」
声が一気に低くなる
『そんなバレたり
追けられる様なヘマはしない』とでも
言いたげな表情で
カーテンの隙間から顔を出し
セフィアは首をぶんぶん振る
「こちらの追手では無い様です…
ただ関係ありそうですけど」
「どう言う事?」
「ふふ」
セフィアは扉のガラスに張り付いてみた
暫くするとまた誰か駈けて行く
「ノアールさん?!なんで?!」
「あら。お知り合いです?」
「うん。あの人ここの裏街
仕切ってるから、
興行ん時用心棒出して貰…
…………またなんかすごいのが
通った…。」
「すごい?」