空の表紙 −天上のエクレシア−



(……カボチャ…?


目の前に飛んで来た
そのカボチャが一回転すると、
草刈り鎌に刈り取られる様に
バラバラと黒い影が勢い良く
吹き飛ばされて行く

カボチャが翻す赤いマントが
勝利旗の様にはためいていた

「人?!」
アクアスは我に返り体勢を取る

八割はカボチャの持つ鎌で刈られた様だ

…そしてアクアスは
その姿を改めて確認する
―わかっていた。
この巨躯。太刀筋。空気…。
…目頭が熱くなる。

―色々話したい事があったんだ…
ここ数年はそんなに膝割って
話す事も無かったけど
男兄弟なんてそんなもんだろ?
あんたが居ない間に
母さん少し痩せたよ
父さんは海に行って釣りばかりしてる
犬はもっと生臭くなったけど
木戸の横で毎日寝てるのは
きっとアンタの帰りを待ってるんだ…。

―そんな万感の想いを込めて、
アクアスは呟いた―。


「…兄…貴…」


『…違う!!』

「え。」

巨躯にカボチャの仮面・赤マント・
(恐らくその辺から拾って来た)草刈り鎌を月に掲げて男は叫んだ。


『私は畑からの使者!
カボチャマンだ!!!』




「………ぇー…。」

『……反応が悪いな』

「だって…どうみたって…
なあ。ルビナ…」


「カボチャマンさま……」

立上がり両手を組んで、
キラキラと瞳を輝かす少女二人


『…あの反応が正しい。』


「うそぉ!!!」


が、残りの闇兵が
一斉にサリュに向かって走り出した






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