空の表紙 −天上のエクレシア−


その光景を見て
アクアスの中で何かが爆発した


「触るな待て…!うあ?!」


立ち上がろうとしたが
四肢が縛られた如く
言う事を利かない


「オデッセイ 貴…貴様!
何か怪しい術を使ったな?!
盗賊が使う魂縛とか言う奴か!!」


気絶するルビナを抱きかかえたまま
オデッセイは、ふるり と
アクアスを見る


「…何も。
ジークの斧技の衝撃に
貴方の体がやられただけだよ。
痺れてるだけだから
じきに治る」

「あ…あの技もなんなんだ?!
光ったりしたし、
人があんな風になるなんて有りか?!」


「…そんな事より
訊きたい事があるんだ。
フリート近衛隊長についてなんだけど…」

「斧の切断って事は
…〜でだから…で
俺がやるとしたらああは持たないな。
見解としては…」



軽いショック症状なのか
アクアスは混乱も手伝って
見当違いの事を言い続け
人の話を訊けない状態になっている


オデッセイは一息吐くと
ルビナをアクアスに預けた


緑の眼をきつく開け
馭者席に乗り込み、手綱を取る


馬の嘶きにアクアスは我に返った


「おい?!どこへ…!!」

「…あれは普通の『残檄』って
斧の技だよ
人間も極めればあれ位出来るって事」
…異形化していたら
あれでは済まない…と呟いたが
それは他人に聞こえる
大きさでは無かった


オデッセイが手綱を張り叩くと
馬が走り出した


弧を描きアクアスの前を滑走する
掴みかけたが一瞬遅かった


「くそおっ!!」

(追わなければ!!


必死に追い縋ろうと
手足をバタつかせながら
馬車が道に出ても諦めずに
全力疾走する



チュン!!


「っうあ?!」

何かが体をかすめた


少しずつ離れて行く馬車の荷台から
マナが手を振り
銃口を向けた踊り子が
小さく謝っている



「あ〜…。もうなんなんだよ!
一体…味方なのか敵なのか!
どっちなんだよーーっっ!!」










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