空の表紙 −天上のエクレシア−


口を噤むアクアスにフリートは語りかける

「…彼も気性は荒いですが、
理由無く侮蔑する様な子では
ありません。
何が切っ掛けだったのですか?」


「…別に俺は
何も言ってません!」


フイと横を向くアクアスに
白兎が息をついて
頭をポンとこづく



「…お前の悪いとこは、
自己過信しすぎで、
それをすぐ口にしちゃう所だ
しかも自覚ナシにな

多分あいつが今頑張ってる試験を「俺なら〜」とか横口入れたんだろう」



アクアスは思い当たる事はあった

一瞬ぐっとなるが

だからと言って
あんな事を言い返されたら誰だって頭に来る



…しかし
理由をここで言うのはもっと嫌だった


「あ〜…わかりました
俺は何があっても端っこで
小さくなってますよ
それでいいんでしょ」


白兎はもう一度息を付くと

「わかった。もういいや。
フリフリ後頼んだー。
ウサタンこれから
お仕事で出掛けるのー。」


「はい。頑張って行ってらっしゃい」


微笑みながら軽く会釈すると、フリートは銀の長い髪をリボンで結び
古い時代物の棚を開いて、埃を掃う


−そこから
焼き菓子入れ位の箱
鍵がついている


その中からまた包みを取り出して
アクアスの前に置いた


「私は
むやみな罰則は好みません

けれど違反は違反
なのでお使いを頼む事にしました。

行き先は城下町を
西へ100ロッソ行くと、
男爵家マドゥー邸があります

そこへ私からだと
この包みを渡して下さい
丁度パーティーを開いている筈ですから、
見識も兼ねて
少しゆっくりしていらっしゃい」


「は…?は、はい。」

(それじゃ罰則にならないんじゃ…)


荷物を持ち
入口で
兵式会釈をし、部屋を出ようとする



扉を閉めようとした時
フリートが呟いた

「…吟遊詩人に気をつけて」


「え?」


聞き返そうとしたが
重い扉は閉まってしまった








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