空の表紙 −天上のエクレシア−




―朝靄―

街はまだ眠っている


街の煉瓦通りを
牛乳配達の馬車

それと擦れ違ったのは
白兎を乗せた軍の黒い護送馬車だ
商店街の更に奥の道を西に行く


武器工場の集まる地域を越えると
大きな運河があり
橋を渡ると船着場だ

もう流刑島へ向かう小さな船が着いている


両脇の兵隊に支えられる様に
荷台から出て来た白兎は
目枷・手枷をされ
南西の風に吹かれていた

片側を支えていた兵隊が泣き出した

「し…白兎様…。こ、こんな事って…」

桟橋に立つ兵の一人が呟く。

「兵隊と罪人の私語は
禁止されている…。」

しかしそう言う彼も沈痛な面持ちだ

本来なら
頭から荷袋を被さなければ
ならない決まりだが
行っていない

それが兵隊達に出来る最大の
白兎への気持ち

そして騒ぎを起こさず
黙って船に乗ってやる事が
唯一今の白兎が
彼らにしてやれる事だった





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