空の表紙 −天上のエクレシア−
†青い扉
――――― 『占い屋GARA』
「おかえり 皆」
夜明け間近
魔法陣から
ジーク、ノアールが
次々と帰って来た
ノアールは少し顔色が悪い
脂汗が、額に浮いていた
急いで胸のネックレスから
ガラの作った青い薬を取り出して
口にいれている
一瞬
体全体が、ほのかに光り
深く息を吐いて、床にひざまづいた
「…すまん ばあさん
薬…くれ…
もう全部のんじまった…」
ジークと言えば
またドッカリと部屋の隅に
巨躯を下ろしたが
まだカボチャの面をつけたままだ
ガラはそちらを見ずに
籠を持って屋上へと向かう
「…薬は ジーク」
「いや…じきに戻る 訓練した」
少し息を
粗げていたが
暫くすると、自分で面を外した
座った肩の高さの
棚の上から
黒い眼帯をとってつける
−ガラが野草を摘んでいると
天上から羽音
オデッセイが少女を抱え
ゆっくりと降下して来た
「?! お前、その子は?!」
「ああ。
この子が、指輪あげた子だよー」
「…そうじゃなくて何故『人間』が…」
オデッセイに片手を引かれ
周りの木々を見回していた少女を
ガラは少しだけケープを拡げて
灰色の瞳で見つめた
「…巫女か……
ああ
なんて綺麗な心だろう… この子は」
ガラの視線に気がついて
サリュはガラの瞳を見る
―… そして黙って
ゆっくりと、ガラの身体に抱きついた
――が、その二人の間に
突然、鎌が刺さる
「ジーク!!?何やってん…」
…しかし
ノアールは言いかけて止めた
庭園から振り向いた
明るい部屋の奥
そこで胡座をかいたままの
ジークの腕は
鎌を投げた時の動きそのまま
視線は静止している
弦植物が繁った木製の壁
薄闇を射す
ジークの太い腕の先を追うと
庭の一番奥まで飛ばされ
腹腸を半分裂かれたまま
鎌で身体の端だけとめられて
張り付けにされた
黒い人型の何かが
――うめき声をあげて
奇妙な動きで、暴れていた
「…… 一匹か?」