空の表紙 −天上のエクレシア−


が、すぐに
ガラはサリュを懐に隠す


その前に立ちはだかった
オデッセイの目が
碧から赤へ変わった


建物の壁を這い登り
大量の闇色の者達が、蟻の様に
天上のドームを抜けて侵入して来る

闇鋼鐵に身を包んでいるが
…動きが人間の物では無い

部屋に飛び込み四つん這いになると
爬虫類の様に首を回した


暗殺者が利用する小刀
ジャマハタルを腕に付け
壁中にそれを突き刺し
高速で壁を移動する


「なんだこいつら!!」
ノアールが両手で体中を摩る


ジークが呟いた

「…闇鋼鐵を
長期間装備しつづけていると
こうなる」

「……何?!」

「裏町の地下工場で
人の闇を火種に、
闇術師達が祈る中で作られる…
極限まで圧縮された『絶望』故
闇鋼鐵は物理的に破壊する事も
外す事も不可能だ」

「…え…でも俺さっき
兜、あっさり外して…」

「お前の知り合いか…?」

「…え あ まあ」



そして闇の爬虫類達が跳躍を始めた

「皆!!真ん中へ!」

ガラが叫ぶと皆駆け寄る


オデッセイが即座に張った
碧の光の壁に
闇の紅い口から、無数の触手が
伸びて来た

壁に当たると悲鳴をあげるが
舌が焼けるとまた生えて来る


碧の壁の表面に
幾つもの手、顔、何故か足の裏
肉塊が張り付き埋め尽くした

「…気色悪いね
ここは割れちまった様だし
先ず避難しよう
ジーク、お嬢ちゃんを頼む」


ぐい と懐からサリュを引きはがすと
ジークはサリュを受け取り
肩に担いだ


そしてガラは足元に魔法陣を描き出す

「ジークから円に入りな」

じっとその闇の動きに
目を走らせるノアールに
ガラは声をかける




< 98 / 227 >

この作品をシェア

pagetop