空の表紙 −天上のエクレシア−
「おまえも早く輪の…」
言い終わらないうちに
その中の一匹がノアールを見た
――そして
ぎぬる。と目玉を廻して
それは『彼女』の顔になる
「ロルカ…!!?」
ノアールが緑の壁から
腕を出した瞬間
シダ植物の弦の様に
一番デカイ爬虫類の腕が伸びる
―――目標はサリュ
しかし彼女の鼻先で
腕は何かに止められた
だが同時に血飛沫もあがる
闇のシダは
サリュを庇う様に真横に伸ばした
オデッセイの腕を貫いていた
ガラは
サリュの上に被さり
周りの動きの邪魔にならない様
身を屈める
サリュは何故か、それに習って小さくなりながら
おへそを隠した
数秒
その弦先が抜けないと解り
激しく もがいたが
弦を一気に縮めて
顔を剥き出しにして回転しながら
オデッセイの首に食らい付いた
「…野郎にかじられるのは
趣味じゃないんだけど…!」
横に避ける
そして弦の持ち主が
甲高い叫び声を上げた
斜めに飛び込んで来た
ノアールのナイフが
黒いその腕の断片を通過する
爬虫類達は跳び上がり
拳の剣先で、一斉に壁を駆け上がり
天井にぶら下がった
急降下してくる闇を
ジークは斧を片手に持ち
柄で弾く
弾かれた爬虫類達は
また壁に傷をつけながら這いつくばり
顔だけこちらに向けて
再び円を描く
オデッセイは再び緑の壁を張る
ジークはサリュを背負うと
輪に入った
「ノアール…『ロルカ』は
あの黒い中にゃ居ないから安心しな。
とにかく早くそこの輪に」
「…なんで知ってんだよ。」
顔の汗をぐっと拭うが
頬を闇い血の筆が走った
「寝言さね アンタの
好きな子ばれたからって
むくれるんじゃないよ!
捕まったら
二度と会えなくなっちまう!
ほら早く!」
ジークの太い腕で
輪の中に引きずり込まれ
ノアールはいつもの習慣で目を閉じた