この世界は、真夏でできている。
今日は夏の雨で、少々湿ったく煩わしい天気だった。

こんな中、僕は人生初バイトへと向かっている。

緊張も勿論あったが、それと同等ぐらいに僕は高鳴っていた。

Leafの目の前に広がる海も、この曇天では薄暗い灰色に染まってしまっている。

一息付き、意を決してドアノブを引く。

入ってすぐに、沢森さんがカウンターの方から店内中に聞こえるほどの声量で｢おっ！｣と声を上げた。

｢日澤くーん！｣

パタパタと僕の方へ駆け寄り、僕の手を引いていった。

関係者以外立ち入り禁止の文字が書かれた扉の中に入るのは、

初めての経験である僕にとって少し身構えてしまう。

戸が開くと、この間の爽やかイケメン店員さんの顔があった。

｢今日から入った日澤くんだよ｣と、店長は僕の事を彼に紹介する。

真っ先に僕も、｢日澤優介です、お願いします｣と何度も調べてシュミレーションした成果を生かす。

結果は焦るあまり声が裏返って完全に外した。

｢田中黒羽です、よろしくお願いします｣

田中さんは少しも嗤ったりせず、ただただ爽やかな笑顔で名前を述べた。
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