この世界は、真夏でできている。
ピンポーン、と呼び鈴が鳴り、後ろを見て、と言われた方へ目をやると、

電光掲示板に“13”と表示されている。

「あれが呼び鈴を鳴らした卓、席のことね。」

そう言うと、店長は田中さんの名前を呼んだ。

「まずは田中くんに行ってもらうから、よく見ててね」

田中さんが向かう席の方へ僕もついて行き、彼の横で彼のハンディの操作と

接客の仕方をメモを片手に必死で観察する。

「アイスコーヒー1つと…」

田中さんは、僕にハンディのボタンを一つ一つ教えてくれながら、スムーズに注文を取る。

最後にかしこまりました、と放ち僕も一礼だけして厨房の方へ戻った。

正直生まれて初めてのバイトで、出来るか不安で仕方ない。

僕の不安げな表情を見越してか、田中さんは笑顔で

「ハンディは正直慣れだと思うから、頑張ろう」と言った。
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