この世界は、真夏でできている。
横目に“志田(しだ)小学校”と書かれた石銘板(いしめいばん)が映った。

私は優介の手を引きながら門から入ってすぐ側の校舎を過ぎ、

2番目にくる縦の向きの校舎の下駄箱へ入っていく。

下駄箱自体は高さが僕らの腰上ほどしかなく、
中に入る靴も小さくて可愛らしいものばかりだった。

ここは私たちが小学6年の頃の下駄箱であったが、
今では低学年の入口になっているようだ。

来客用のスリッパ置き場から2つスリッパを取り出し、階段を登る。

職員室の看板が見えてきたところで、扉を3回ノックする。

いきなり小学校に来させられて、職員室を訪ねるというのは、

さすがに緊張しているのか、優介はなんだかよそよそしく、

私たちに不安げな視線を送った。

私たちはでっかくグッドサインを差し出した。

中から出てきた中年女性の先生は、私たちが卒業してから入ってきた先生なのだろう、全く知らなかった。

私は、「突然すみません!!卒業生なんですけど、青木 真由美|《あおき まゆみ》先生いらっしゃいますか」と尋ねた。

その先生は、あー、青木先生ね、といい中に戻っていく。
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