この世界は、真夏でできている。
ドアから出てくるなり、わっ、と明るい空気を纏った女性に、私と彩絵は飛びついた。

｢まゆちゃん先生ーっ！｣

彼女は私たちの6年の時の担任だ。

先生は、その頃はまだ新任教師だった。

熱血系で、明るくて、歌うのが大好きで、それでいて厳しかった。

私たち3人とも、沢山怒られたし、たくさん笑わせてくれた、大好きな先生だ。

彼女は｢久しぶり、るーちゃん、彩絵、優介！！｣と屈託の笑みを載せた。

｢みんなほんと大人っぽくなったね。

優介なんてぐんと背が伸びちゃって。
るーちゃんの身長もとうに越してるのね。｣

｢あぁ…はい｣

優介の返事は、戸惑いを隠せない声をしていた。

まゆちゃん先生は少しの寂しさと、嬉しさが混じったような笑顔を優介向けた。

｢久々に会うから、ちょっと照れくさいよね。
優介、アメリカはどうだった？｣

彼は言葉を詰まらせ、必死に頭を巡らせているようだった。

良く考えれば、中3で事故を起こしてからは、それ以前の記憶は全くないし、

事故後も治療とリハビリばかりだったと言っていたから、アメリカを楽しむ余裕なんてなかっただろう。

彼は少し黙り込み、楽しかったです、とだけ答えた。
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