この世界は、真夏でできている。
白島駅の中にあるショッピングモールの屋上に、そのBBQ会場が備われているらしい。

最初は、海の家でレンタルできるBBQセットという案が出たが、

優介が海が苦手なため、それは断ってこっちの会場になった。

私たちは予約していた番号を伝え、ここの利用者専用のリストバンドをつけた。

周りも満席で、大学生らしき若者たちが皆、お酒を手に黄色い声で溢れかえっている。

「かんぱーい!!」

私達も、そんな彼らに混じってジュースを手に持った。

屋上ということもあってか、風が強く、必死で皿やカトラリーを抑えた。

私たちはその状況を、腹の底から笑っていた。

黒羽は、調子に乗って歌を歌い出している。

優介と黒羽は、いつのまにか敬語を崩していた。

黒羽がふと、私たちに質問をした。

「瑠夏がよくさ、待ってる人がいるって言ってたじゃん、それ優介のこと?」

私は一息ついて、そうだよ、と答えた。

彩絵が一瞬こちらに何か言いたげにしていたが、黒羽の騒ぎ声がそれをかき消した。

黒羽はそれを聞いて、面白がっているであろうように騒ぎたてた。

もちろん、優介とまた会話を交わすのを夢見ていた。

だけど、私がずっと、待ち続けていた幼なじみは、彼ではなかった。

……そのはずなのに、いつのまにかわたしは、優介を、待ち人としていたのだ。

彼と、こうして時間を共有している。

記憶がないはずなのに、楽しくて、愛おしくて仕方なかった。

東希に抱いていた恋心は、いつのまにか、優介の方を向いていたのだ。

すごく、青春を謳歌している気分だった。

夜が来るのが、怖くなるほどに。

私たちは風を浴び、笑い声を浴び、汗を浴びた。

時間が過ぎるのが、あっという間だった。

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