この世界は、真夏でできている。
部屋の中で各々ゆったり過ごしていると、優介が19時から向かいたいところがある、と言った。

館内着の浴衣に着替えた後、私は優介に連れられて杠葉湖(ゆずりはこ)というこの地で有名な湖に訪れた。

受付と見られるテントが設置されており、既に何人かの人達が並んでいる。

周りの人たちに目をやると、みんなが手にしていたのは抱えられるほどの大きさをした灯篭だった。

それをみてようやく、ここ杠葉は灯篭流しのイベントが日本で最も有名であることを思い出した。

15分ほど並んだ後、私達も灯篭を受けとり、湖の前で開始される8時まで待機していた。

大混雑しているというほどでもないが、湖の半分を人々が囲み、

今か今かとその時が来るのを待ちわびていた。

間もなく始まるアナウンスが入り、会場が一気にざわつく。

「なんか緊張してきた」と言うと、優介もわかる、と胸に手を当てた。


3、2、1___。


その合図で、私たちは湖の中心を目掛けて、淡くも、力強く光を放つ灯篭を一斉に流した。
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