この世界は、真夏でできている。
❁⃘

待ち合わせのカフェで、彼女を待ってる間、いつもの小説を取り出す。

本は終盤に差し掛かっている。

ー「綺麗…!」ー

2人は夜景を見に来た。

やはり、所詮ただの恋愛小説に過ぎないのか。


途端、店の中の空気が凍るように冷たくなる。


いや、僕自身に悪寒が走り、寒さを感じたのだ。

ー見覚えのある景色だ。

記憶の中に忌々しいほど、どこまでも深く、深く刻まれている。

以前、ここへ来た時は彼女はいなかった。ー


小説の雰囲気が一変しているのが、文字だけなのに、はっきりとわかる。

ページをめくるのが、怖い。手が小さく震える。

それでも僕は、無我夢中でページをめくり続けた。

ー僕が初めてここへ来たのは、彼女の恋人とであった。ー

恋人……?

自分自身と…?
1人で来た、という意味だろうか。

一体、誰と…。

周囲の音が、一切消えた。

………え?

そのページに書かれた内容を、よく理解できなかった。



『トンッ』と僕の肩が叩かれ、思わず勢いよく振り向く。
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