この世界は、真夏でできている。
「お祭りに行こう」

彼女はカフェラテを飲むストローを2本の指で摘んだまま固まっていた。

それもそのはず、提案した祭りが開催されるのはここらでも有名な海のある観光地で行われるからだ。

来週の金曜、海上花火が上がる巨大な規模の祭りがあるというニュースを、昨日拝見した。

これは僕の記憶を取り戻すための“メモリーズの旅”とは全く関係ない、

ただ彼女と一緒にいたいという、“僕”の思いだった。

この夏を、“メモリーズの旅”を終わらせたくない。

もしかしたら、ずっと抱いている海への嫌悪感の正体となる鍵が、得られるかもしれない。

そして何より、彼女との時間が、終わって欲しくない。


「いいよ、行こう。今週の金曜だよね。」
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