この世界は、真夏でできている。
目の前に広がる、公園の木やマンションで邪魔された

とても綺麗とは言い難い青と橙色の景色を目の前に、

彼女はビー玉のように目を丸くきらきらさせていた。

ただ、感動して輝かせているわけじゃないのは僕にもわかる。

「ここには俺との思い出、ある?」

たぶん。

「…ううん。ない」

望んだ答えじゃない。

ここは、彼女と、彼の。彼女の初恋の人との思い出があるんだろうと、

彼女の返事を聞く前に、瞬時に悟ってしまった。

後ろで母親が、もう帰るよ、とただを捏ねた男の子に言い聞かせる声が聞こえる。


彼女は以前、ここで彼とどんな景色を共有したのだろうか。

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