この世界は、真夏でできている。
僕はただ橙色に染まった彼女を横目に眺めた。

彼女もそんな僕の視線に気づき、僕の目を見つめた。

その瞳に、思わず心臓が音を鳴らす。

次の途端、彼女は表情を一変させ、

顔を真っ赤にしてわっ、と泣き出してしまった。

「えっ。」

予想外の出来事に、僕は思わずあたふたしてしまう。

「私はっ…!

優介の背が伸びて、かっこよくなっちゃったことが悲しい!」

「はぁっ!!??」

照れを思いっきり隠すように、僕は叫んだ。

後ろの親子も少し驚いているようだ。

「もう…何言ってんだお前…」

「だってっ……」

彼女は目から大粒の涙をぼろぼろと流し続けた。

「だ、から…。
メイク崩れるつってんだろ。」

どういう意味だか、どういう意図だかさっぱりだが、

とりあえずこの状況をどうにかしようと、ポケットからハンカチを取り出し、

彼女の頬にそっと触れた。

熱くて、柔らかかった。


涙の水滴で、彼女のまつ毛がきらきらと光っていた。

さっきよりも、鼓動が早まっているのがわかる。


「私の、知らない人みたい」


ドクッ、と心臓が音を鳴らした。

多分これは、いい意味の方ではない。
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