この世界は、真夏でできている。
「瑠夏ー、今日うちでご飯食べてくんだよな」

「あ、そうだ!」

帰りの挨拶が終わり、みんながランドセルを背負って勢いよく教室から飛び出していく。

瑠夏は、楽しみ、と浮かれた声を弾ませている。

彼らの会話が、また私をイラつかせた。

私は当てつけのように1人だけ席につき、ひたすらしおりをまとめる作業に入る。

「瑠夏?早く帰ろ」

3冊目に入ろうとしたところで「彩絵ちゃん」と声をかけられた。

顔を上げると、あの泣き虫が立っていた。

「なに?」

「それ、来週の体験学習のしおりだよね?」

表紙には、とうげい体験学習と大きな文字で書かれている。

「そうだよ」
「私もやりたい!」
「えっ」

返事をする前に、瑠夏は背負ってたランドセルを私の前の机にどかっ、と起き、

椅子をくるっと逆向きにして座った。

「いいよ、今日用事あるんでしょ」

「うん、でも、これ楽しそうじゃん」

彼女は自分の筆箱からホチキスを取りだし、バラバラになったしおりを順番に並べ始めた。

どう考えても、これが楽しそうに見えるはずがない。

優介も私の隣の席に座り、一緒に作業を始めた。

クラス全員分のバラバラのページのしおりを1枚1枚並べ、それをホチキスで止める。

1人でこの作業をしていたら、何時に終わることが出来ただろうか。

私は、この2人の、何を、どこを嫌っていたのだろう。
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