この世界は、真夏でできている。
あの日の彼の表情は、きっと、この先一生忘れない。

6年生の夏休みに、みんなで近所の祭りに出向いた日の事だった。

「え、瑠夏は?」

誰かが気づいた。振り返ると、そこに瑠夏の姿がなかった。

そして、もう1人も。

「てか、東希もいない」


地元の祭りで、小さくてしょぼい花火の真下、1人の少年が恋に落ちた瞬間だった。

少し経つと、瑠夏の手を引く東希が現れた。

彼が、東希が瑠夏を下から見つめる瞳は、

花火を背景にゆらゆら揺れる彼女を捕らえて離さなかった。

花火の漏れる光が彼を照らすなか、頬が真っ赤に染まっているのは、

私からしてみれば衝撃的で、一目瞭然で、強く強く目に焼き付いた。
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