この世界は、真夏でできている。
「あんたって、瑠夏と一緒に帰ったりしないの?」

「え?」
「え?って、あんた瑠夏のこと好きなんじゃないの。」

「……エッ。」

放課後、帰り道が一緒な私たちは、なんとなく合流した。

漫画やアニメでしか見たことないくらい、彼はぶわっ、と赤面した。

「それなんで!??!」

なんでって、私からしてみれば、隠すにはどう考えても無理があるくらい、一目瞭然だ。

「まっ、じか…」

東希は少しの間口篭り、「だって、」と言葉を続けた。

「だって俺、優介に敵いっこない」

「どういうこと?」

「…夏休みに、みんなで夏祭りに行っただろ、

俺、あん時なんだよ、瑠夏のこと…好きになったの、」

うん、知ってる。幼い頃からずっと見てきた東希が、初めて見せたことの無い表情をしていたから。

「優介がな、瑠夏の異変にすぐ気づいたんだ」
「異変?」
「足元を見てた。それを見て、俺が先に話しかけた。

列から抜け出して、あいつの靴擦れを手当してやった」

あの時2人がいなくなってたのは、そういう理由があったのか。

確か、その後合流した頃にはもう、彼の目は彼女を映していた。

てことは…

「そしたらあいつ、花火みたいに、笑ったんだ」


(こいつ、こんなに顔に出やすいやつだったっけ)


なんでも器用にこなしてた東希を、ここまでにしてしまうなんて。

瑠夏の偉大さに改めて実感させられる。
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