この世界は、真夏でできている。
ふわっ、と、消毒の香りがツンと鼻を刺した。

私は、この匂いを、よく知っている。

これは。

病院の匂い、だ。

息が苦しい。
呼吸の仕方を忘れたようだった。

ふと、涙が溢れた。


彼は、私の幼なじみで、瑠夏の事が大好き、という点が共通していた。

私の知らないところで、風のように、すっと、いなくなってしまった。

自分が嫌いだ。

守りたい人は、誰も守れなくて、自分は救ってもらってばかりで、

悔しくて、悔しくて、堪らない。

あの時の瑠夏の表情が、ずっとこびり付いている。

誰か、もう、私を、殺し
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