この世界は、真夏でできている。
『ガラッ』

扉が勢いよく開いた。

「よっ、大丈夫か?」

そこに立っていたのは、田中黒羽だった。

「保健委員だからさ、俺。わりいな、いきなりビックリしただろ。

あれー、先生いねーな。ま、いっか」

呼吸が乱れるまま、私は横目に彼が近づいてくるのを眺めた。

「これ、荷物な」

あぁ、そうだ。

私は、体育のバスケの時間に、そのまま倒れた。

「えっ、どうした?!辛いんか??」

「あっ。…」

田中は、私の泣きあとを目にしたようだった。

「別に、なんでもない。荷物ありがとう。」

私は、彼に背を向ける。

こんな時にでも、私に可愛げなんて全くなかった。

「んー、そうか?なんかいるもんあったら言えよ、俺、持ってくるし。」

後ろから鼻歌が聞こえてきた。

「あの…教室戻らないの?」

「ん?うん、だってなんかいるかなーって思って。

てか、体調悪いとき1人って、俺だったら、寂しーーってなるし」

そう言って彼は、またよく分からない鼻歌を歌い出した。
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