この世界は、真夏でできている。
“春の嵐”という言葉が存在しているくらいで、

今シーズンの春は特に雨が多かった。

せっかく綺麗に咲き誇っていた桜も、連日の雨でほとんどちってしまったと思う。

共働きの母は、私にご飯はラップしてあるから、というセリフを置いて、家を出ていった。

今日も、やっぱり雨が降っていて、部屋の窓にぴしゃぴしゃと打ち付けている。

今朝測った熱は、39度を超えていた。

きっと体調もこの気候変動から起こされたと思う。

私は自分のスマホで、適当にチョイスした映画を見ることにした。

昼近くになっても腹は空かなかったが、せっかく母が作ってくれたし、

なにより体調悪くても食べなさい、とボヤかれそうなので私はリビングへ向かおうと、

ベッドから立ち上がった。

ベッドの真上に、私はコルクボードを設置して写真を大量に貼っていた。

どれも大好きな写真で、いちばん楽しい時間だった。

優介がアメリカに飛んでから1年後、ぱったり連絡を取るのをやめてしまった。

未だに、たまにこうして写真を見ると寂しくてたまらなくなるし、

距離ができてしまったと痛感してしまって辛い。

私が瑠夏と(わだかま)りが出来てしまったこと、

彼女を慰めることさえも、何も出来なかったことを優介が知ったら、

どれだけキレられるだろうか。

仲直りさせるためにきっと、誰よりもいちばん必死になっていただろう。

怒声のひとつでも、かけて欲しかった。

優介にメッセージを送ろうとして、踏みとどまる。

今更、打ち開ける勇気がなかった。
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