この世界は、真夏でできている。
下の階から、母親が名前を呼んでいるのが聞こえた。

返事をする気力がなく、そのまま待っていると部屋の扉が開いた。

「瑠夏が来たよ」


(…え?)

「これ、」

そう言って渡されたのは、大量の飲み物と色々なお菓子が入った袋だった。

「瑠夏の顔久々に見たよー。美人になってたね。
あとでお礼言いなさいね」

全く状況が掴めなかった。

母親が部屋を出たあと、ゆっくり立ち上がり、その袋の中を漁る。

私が好きなものばかりだった。

(病人にお菓子って。)

瑠夏らしくて、嬉しくて、泣いた。

早く、早く会いたい。

今までのこと全部、謝りたい。

身勝手に離れた私に、また歩み寄ってくれた瑠夏にお礼がしたい。

数日後、通学路で彼女の姿を見つけた時、思い切り瑠夏の名前を呼んだ。

瑠夏は彩絵、と笑顔で私を呼んだ。

「治ったんだ!」

返事をする前に、私は勢いよく瑠夏に抱きついた。

「ごめん、ごめん、ごめんね。ありがとう。」

ぼろぼろ泣きながら、ごめんとありがとうを繰り返した。

瑠夏はすごく動揺していた。

隣には、田中くんが立っていた。

「黒羽から、聞いちゃった。

ずっと話しかけられないでいるのを悔いてるって。

私の方こそ、彩絵と話できなくて、ごめん。」

私は勢いよく首を振った。

田中くんが、私と瑠夏の肩を組む。

「良かったな、彩絵(丶丶)


私はこの時に、確信した。

黒羽に、恋をした。
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