この世界は、真夏でできている。
❁⃘

もうすぐ真夏も終わりなのに、待ち合わせが空雪駅なんておかしなものだ。

特別大きい駅でもなければ、新しくもない。

ただ海と山に囲まれた、ほんの少し、静かな駅。

花火が打ち上がる時間が近づけば、ここもいずれ来場者の声で賑わう。

浮かれてるが故か、待ち合わせより15分早めに着いてしまった。

僕は今日、必ず彼女に好きだと伝えると決めていた。

「わっ!!」

突然声をかけられ、僕は情けない声をあげてしまう。

正直時間にルーズな彼女は、待ち合わせより早く着くと思っていなかったので、

倍驚いてしまった。

「びっ、くりしたー…」

「あっはははは、ねぇ、気合い入れすぎた。どう?」

彼女はいつも綺麗だ。でも今日は少し違う。

色が抜けて、少し茶色の交じったまだらな髪は、器用に巻かれ、頭の高い位置に纏められている。

色鮮やかな花が描かれた浴衣が、彼女をよりいっそう引き立たせ、

耳元には小さなピアスが装飾されている。

そして、手元を見れば、お揃いのブレスレットが向日葵を光らせていた。
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