この世界は、真夏でできている。
彼女は下駄を砂浜に脱ぎ、輪郭のはっきりとしたその足で砂を蹴っていく。

お揃いのブレスレットは光を反射し、ピアスと共にきらきら光っていた。

水しぶきが彼女の肌を濡らした。

結局、彼女の浴衣の裾は水に浸ってしまっている。

背景の終わりのないどこまでも続く海と、橙色の夕日が、彼女を影にした。

______。


僕は、スマホを砂浜に投げ捨てた。


(海に、(さら)われる。)


咄嗟に、そう思ったのだ。

気づけば僕は、靴のまま海にいる彼女の元まで駆けていた。


彼女の左腕を、ぐっと掴んだ。


ふと頭の中で、あの日、思わずすぐに閉じてしまったあの小説の、

あの一文が流れた。


ー僕は彼を殺した。ー


どこかで、同じ光景を目にしたことがある。


映画か、小説のワンシーンか。


それと も 。




僕 の 、 記 憶
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