この世界は、真夏でできている。
学校に行かなくなって、もうすぐ半年が経つ。

母親と先生に頼みこみ、学校の人達には内緒にしてもらった。

みんなに病気で同情した目で見られるのも、

この抗がん剤で無くなってしまった髪と、

いかにも病人、と言った姿を見せるのもなんとなく、惨めになりそうで。


蝉の声が、うるさくて堪らなかった。

診断が降りてから、ちょうど1年ほど経つ。

彼女の夢を見たのは、久々だった。

夢の中でも、彼女は太陽のように笑っていた。


何気ないこの夏が。本当に、夢のようで。


彼女にはまだ、そんな夏を送る未来がある。



僕がすべき事は、ただ1つだった。
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