この世界は、真夏でできている。
彼女は少し覚束無い歩き方をしているように見えた。

それから少したって、最語尾にいたはずの彼女が僕らの並びに居ないことに気がついた。

息が詰まるほどの人混みを掻き分け、小さな木の下で座り込んでいる彼女を見つけた。

僕よりずっと背の高いはずの彼女が、小さく蹲っている。

彼女は涙目だった。

もしかしたら、彼女は泣き虫なのかもしれない。

「東希」

僕はすぐに彼女の方へ駆け寄り、手を差し出した。

指と指が絡め合う。彼女の体温が、直接僕に届いた。

心臓の音が、彼女に聞こえないことを祈るばかりだった。

彼女は足を抑えていた。

手を退け目をやると、痛々しく真っ赤に腫れ、所々出血してしまっていた。

先程、覚束無い歩き方をしていたのはこのせいだったのか。
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