この世界は、真夏でできている。
「優介は、いつもこんな時間に学校来てるの?」

「まぁ、今日はたしかにちょっと早めだけど」

ふぅん、と返し、私は教科書を自分の机にほっぽ投げたあと、窓の外を眺めに行った。

私たちの他にも、ちらほら登校してくる生徒たちが現れ始めていた。

「もうすぐ終わるなぁ、小学生。」

「まだあと3ヶ月もあるじゃん。」

もうすぐ冬休みにさしかかろうとしている今は、少し開けた窓からも

冷たい風がつん、と私の鼻をつついた。

思わず窓を閉めると、彼が言葉を続けた。

「毎日毎日ランドセルしょいながらお前とじゃれあって、一緒に帰って、

もう、終わっちゃうんだ。

ずっと、こんな毎日が……。

続くと思ってた」


「えっ。」

思わず、声が漏れてしまう。

彼の目からは、涙が、垂れていた。

「えっ!?ちょっと、どうしたのも〜〜。」

彼の涙を必死で拭った。

「別に卒業してもちょくちょく会おうよ。

中学別になるにしたって、何も遠くに行くってんじゃないんだからさ」

「違うんだよっ、俺……」

教室のドアが、またガラッと音を立てて開かれる。

扉の方を見ると、そこには澪良 彩絵(みおら さえ)が立っていた。
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