この世界は、真夏でできている。
「えっ、2人ともはやっ。何してるの?」

優介が、私の影に隠れる。

「昨日の宿題やり忘れちゃってさ〜。早めに来てやろうと思って。」

私はポケットからハンカチを取りだし、後ろを向いたまま優介に差し出す。

「そういうこと。で、もう終わったの?」

涙を吹き終えたのか、優介は後ろから「この俺が教えてやったからな」と前のめりになる。

「そういう彩絵はやってきたの〜?」

「私も、やり忘れてやりに来た」

彩絵はランドセルから教科書とノートを取り出すと、先程の私と同じように

「優介〜。見せて♡」と可愛くおねだりした。

やっぱり優介は、「教えてやるから自分でやれ。」と冷たくあしらう。

「へーい」と彼女も、私たちのいる席へ向かってきた。

「瑠夏」

ん?と彼の目を見る。

「ありがとな」

優介は笑っていたが、近くで見るその目は、まだ薄ら涙で濡れているのがわかった。



彼が持っていた本は、英語の、本だった。
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