この世界は、真夏でできている。
彩絵に進められ、私は彼女が店を出て小一時間ほどたった頃、その言葉にまんまと従い

カフェを出て駅とは反対の方向へ進んだ。

海に近づいているのか、潮の匂いがつん、と鼻を刺す。

潮風を浴びて、急に夏が終わってしまうことを実感し、

少しだけ寂しい気持ちになった。

彼女が言っていたであろう花屋を見つけたので、右耳のイヤホンを外した。

その時、店頭に金髪が混じった、チャラチャラした男を見つけた。

彼は私に気づくと、咄嗟に店の中へ隠れてしまった。

「あー…。伊勢?」
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