この世界は、真夏でできている。
ほとんどの人が、彼女の姿を見て、彼女の東希への恋心は気がついていただろう。

東希と瑠夏は、お互いの気持ちを知らずに、二度と会えない存在になってしまった。


そこから私の、ずるくて、汚い嘘が始まった。


『優介の事が好きなのに、なんで?』

そんなの、決まっていた。
彼女が優介じゃなくて、東希に恋をしていたから。

一日を過ぎていく事に、少しずつ、罪悪感がのし上がっていって、

いつしか潰れてしまうのでは無いかと、怯え続けている。

彼らの真実を、私は今でも見て見ぬふりをし続けている。

遠い存在のようになってしまった瑠夏を、

中学に入って話さなくなってしまったから、

クラスがまた離れてしまったから、

そうやって、だから仕方ないのだと、自分を正当化していた。

この場にいなくなってしまった瑠夏に、話しかける人はいなくなってしまった。

ずっと…気付かないふりをしていた。

私は、彼女に何もしてあげられなかった。

それをずっと、悔いていた。

高校をあえて彼女と合わせ、少しでも彼女を助けようと、

支えようと勝手に恩着せがましく傍に居続けた。

彼女のためなんて、ただの綺麗事だった。

これは、私のエゴだ。

私が私に纏わりつく罪悪感を振り解きたくて、彼女に執着しているんだ。
< 192 / 231 >

この作品をシェア

pagetop