この世界は、真夏でできている。
応答のボタンをタップし、

か細い声ではい、と応える。

自分でも引くくらいしょげた声をしている。

そんなことを考える間もなく、彼女がすぐに言葉を発した。

「明日の夜5時、白島(しらじま)駅北改札前ね!!」

唐突な言葉と一方的に切られた電話で、

僕は「えっ、」という情けない声しか出せなかった。

僕の気持ちが現れた声とは裏腹に、彼女は妙にご機嫌な声色だった。

東希と上手くいったのかもしれない、という事はなるべく考えないように、

脳の奥の方へと追いやった。
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