この世界は、真夏でできている。
冷たい空気に身を覆われ、

耳の感覚が失われかけていた。

空からは物音ひとつ立たさず、静かにゆっくりと真っ白な雪が降り注いで来ている。

今日は数年に一度の寒波が訪れ、
数日前からずっと積雪となるとニュースが大騒ぎしていた。

滅多に雪の降らないこっちでは、少し雪が降るだけでも大騒ぎとなるのに、

積もるとなると僕含め子供だけでなく、
大人もなんだかそわそわしているようだ。

マフラーに顔を埋め、ポケットからスマホを取りだす。

画面を見れば、16:52と表示されていた。

せっかく土曜であると言うのに、

今日は8時前には起床してしまった。

時間と待ち合わせ場所以外何も発さなかった彼女の不思議な電話で

僕は一日中変に緊張させられていた。

小さくため息を吐き、もうほとんど明るさの残ってない空の方を見上げれば、

白い息がふわふわと浮かんで、静かに消えてしまった。

ふと、後ろから名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
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