この世界は、真夏でできている。
僕らが駆け足で雪の中へかけていく度に、耳元に冷たい感触が当たり、

足元はギュッ、ギュッと音を鳴らしている。

僕はずっと、繋がれたままの手に意識が持ってかれていた。

ふと顔をあげれば、彼女の黒い髪は雪がかかって、

きらきら光っているようだった。

こうしてみると、彼女は透き通った綺麗な髪をしている。

どうして、この彼女の意識は、僕の方へ向いてはくれないのだろうとさえ思った。

彼女が見て、といいようやく立ち止まった。

僕は視線をあげるその瞬間が、

すごく、すごくゆっくり流れているように感じた。
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