この世界は、真夏でできている。
わぁっ、と目の前の彼女ははしゃいでいた。

観覧車がある程度の高さまで上り、先程まで視界の目の前を埋めつくしていた景色たちが、

アトラクションや街の灯りたちが、今では豆粒のように小さく見える。

耳が取れるような寒さの外とは違い、この小さな空間は暖かさがあった。

彼女は先程から、席に座らずに中を歩き回り、窓から見える景色をあちこち覗いていた。

「瑠夏」と僕が彼女の名前を呼ぶと、彼女はん?と今度はこちらを除く。

「あんまはしゃぐな。」

彼女は一瞬ぽかんと口を開けていたがすぐに「あぁー。」と言いニヤリと笑った。

「あんたもしかして怖…」
彼女が言い終わる前に、僕はうるせぇ、と口を割った。

ふふっ、と笑う彼女に情けなさと恥ずかしさで目を逸らす。

「優介」

彼女はやっと落ち着いた面持ちで僕の前の椅子に座った。

僕は彼女の目を見つめ、彼女も僕の目をじっと見つめている。

この時間がずっと、続けばいいのにとその一瞬の間で思ってしまった。
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