この世界は、真夏でできている。
「私はさ」と彼女が口を開く。

「優介がいないと、寂しくて泣いちゃうかもしれないけど。でも、」

彼女の表情はとても、この冬に似つかわないほど、暖かかった。

「待ってるから、アメリカ行ってもずっと。」

彼女がようやく、今日僕を誘った理由を、口にした。

僕は2ヶ月ほど前から、明後日のクリスマスを最後にアメリカへ5年間滞在することが決まっていた。

ずっと、口にしてしまうことを恐れていた。

彼女にいつか、早く言わなければならないと思えば思うほど、

口にしたら、現実味を増してしまうから。

会えないと、実感してしまうのが怖くて、伝えられずにいた。
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