この世界は、真夏でできている。
時刻はいつの間にか20時をすぎ、

イルミネーションの光を見に来た人達はそろそろと帰路に向かい始めている。

母親にはもともと遅れる節は伝えておいたし、

彼女はお兄さんがもうすぐ来るとの事なのでここで別れることになった。

「えっと…明日もまだ学校来るんだよね?」

「うん、行くよ。」

「あ!よかった!じゃあ、明日ね!」

小さく振った手を下ろし、僕も彼女と別れようとした直後、

後ろから小さなくしゃみの音が聞こえてきた。

思わず振り返ると、耳を真っ赤にした少女ははぁ、と自分の手を温めていた。

やっぱり、首元があんなに空いてたらそりゃあ寒いよな、と思った。

「瑠夏」
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