この世界は、真夏でできている。
「中3の夏、アメリカに行った時に、海に呑み込まれたの。

だから何か知ってるんじゃないかと思ったんだけど…。

そっかー、優介も記憶なくなっちゃうなんて。

なんだか呪いみたいでちょっと怖いなぁ。」

「お前そろそろ危ないんじゃないの」

優介にそう言われ、胸ポケットから自分のスマホを取りだし、画面の時刻を見る。

「あっ!!いい加減やばいかも!さすがに今日は行かないと。またね!!」

ひらひらと怠げな顔をしながら手を振る優介を後にし、私は小走りで学校へ向かった。

「今日はって…、あいつまさか昨日あの後サボったのか?」

優介は呆れた顔で、走り去る私の背中を見つめた。




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