この世界は、真夏でできている。
下駄箱で既に暑さを徐々に感じながら靴を履き替えると、嫌な足音が聞こえてくるのがわかった。

私は逃げるように早歩きで下駄箱を出るが、予想通り(つんざ)くぐらいの声量が、

後ろの方から近づいてきた。

「るかぁっ、なんで逃げんの。」
「逃げてない。塾があるから急いでるの。」

「だーからお前塾通ってないだろって。通ってたら期末の結果もっと良かったでしょ。」

「ちょっと、それ以上言ったらマジでぶん殴ってやるから!」

冗談だって〜とへらへらしながら私の後を付いてくるが、私は校門の前に、誰かが立っているのを目にした。

伊勢を無視し、彼の元へ駆け寄る。

「優介!なんでいるの?!」

優介は門に寄りかかった状態で、スマホから私へと目線を移す。
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